第85回全国高校サッカー選手権 滋賀大会決勝

 第85回全国高校サッカー選手権滋賀大会の決勝は、昨年全国制覇を達成し、セクシーフットボールで旋風を巻き起こした野洲高校と、体育科を有する名門草津東高校との対戦。両校とも選手個々の技術レベルは非常に高い。草津東高校はノーシードから勝ち上がり、予選無失点と堅守を誇る。野洲高校はパス良し、ドリブル良しと非常に多彩な攻撃のチーム。たいへん見応えのある一戦となった。
 野洲の全国制覇のためか、プレスもけっこう多い。滋賀県は全国選手権大会はけっこう結果を出していて、(ずいぶん古い記録も混じっているが)優勝1回(野洲高校)、準優勝が2回(最近では草津東、大昔では滋賀師範)、3位が3回(守山高校、守山北高校、滋賀師範)、ベスト8が5回とずいぶん勝っている。特に野洲高校はフィジカル重視&放り込み主体の高校サッカーに一石を投じる、パス&トラップ&ドリブルといった個人技中心(しかも選手個々は連動する)の試合運びで、魅せるサッカーをするので、関心も高いのだろう。また奈良の五條高校、京都の洛東高校の姿も見られた。

【草津東のスターティングメンバー】
GK  1.山田紘士
DF  2.増田勝行
    3.井上翔太
    5.竹村憲二
MF  6.岡野雅俊
   10.中村龍之介
   12.西保信吾
   15.吉川智貴
   19.辻倫太郎
FW  9.岡本亮佑
   11.北野雅寛(キャプテン)

【野洲高校のスターティングメンバー】
GK  1.瀧本尚之
DF  2.青木亮都
    3.田中雄大(キャプテン)
    6.芝俊明
MF  4.荒堀謙次
   15.奥田健斗
    7.廣瀬直弥
    8.村田和哉
   10.乾貴士
FW 14.中武真哉
    9.山田晃平

乾貴士
 注目選手は、高校生ながらU-21日本代表にも選出されている乾貴士選手。昨年、2年生ながら全国優勝に貢献したMFである。昨年はウィンガー(SH)であったが、今年はトップ下を任される。ただ、代表から戻ったばかりと言うこともあり、連携やコンディション面ではやや不安がある。もう一人は現在8得点で得点王のFW山田晃平選手。ドリブルで突っかけていく彼のプレーは見ていてたいへんおもしろい。
山田晃平
 草津東では大型ツートップ岡本亮佑選手と北野雅寛選手に要注目。北野選手は先の準決勝、累積警告で出場できなかったので、この決勝は期するものがあるだろう。
 野洲高校のキックオフで試合開始。早々(前半開始1分40秒)に草津東FW岡本が遅延行為でイエローカード。これで、彼の攻撃的なプレーが影を潜めなければよいのだが。
 前半、野洲高校が優勢に試合を進めるもゴールを奪えず。草津東高校ゴール前で野洲高校選手が倒され草津東GKが頭を抱えるシーンもあったが、ノーホイッスル。乾選手は絶妙のスルーパスを何本か通すも、ゴールにはつながらず。
 その乾選手は草津東の辻選手と竹村選手が徹底マーク。乾選手が突破をはかった前半24分、竹村選手がチャージで止めてしまい草津東はイエロー2枚目。パスだけでなく、ドリブルも抜群な乾だけに、草津東のいらいらが伝わってくる。前半27分、野洲のパスミスをセンターサークル付近で草津東がカット。そのまま野洲陣内にドリブルで持ち込み、野洲ディフェンスの裏スペースへ走り込んだFW岡本にスルーパス。岡本ゴール右角度のないところから左足を振り抜くも、ボールはサイドネットへ。草津東はこれが初めてのシュートとなった。
 前半33分、乾がセンターサークル後方から、相手FW&MFを引き連れ、ドリブル突破。草津東ディフェンダー3人を抜いて、ペナルティーエリア内へ。草津東最後の一人が必死のスライディングでなんとかシュートは阻止。そのこぼれ球を受けた中武が廣瀬にパス、廣瀬のパスを乾がヒールで流し、そのまま廣瀬がゴール左に駆け込むも廣瀬がファールを取られる。あいかわらず、華麗な攻撃で魅せる野洲に皇子山陸上競技場の観客席も盛り上がる。結局前半は両者とも得点なし。
荒堀謙次
 エンド代わって、草津東のキックオフで後半開始。開始30秒、野洲高校センター右からのフリーキックを荒堀がはたいて乾へ、乾のスルーパスに村田が反応しシュート。これを草津東キーパー山田が好判断の飛び出しで阻止。
 後半3分、ゴール左30mで野洲高校ファールを受けフリーキック。荒堀選手が直接狙うも、壁に当たりゴールならず。野洲は中盤が連動し、さらにインターセプト連発で野洲の時間が続く。
 後半5分、くさびの折り返しを草津東岡本が受け、やや遠目から左足でシュート。ゴール右に外れる。
山田昇平
 後半6分、右サイドから荒堀がフェイクを入れた華麗なドリブルで駆け上がり、中央乾へパス。10番乾のスルーパスを7番広瀬が折り返し、9番山田がスライディングしながら押し込んで野洲高校が先制。野洲FW山田選手はこれで9得点目。
 野洲高校はこのゴールのあとボールポゼッションが下がり、草津東高校に押し込まれる場面が増える。だが、野洲の安定したディフェンス陣がゴールを割らせず。
 後半10分、得点した野洲高校山田選手が交錯し、担架でピッチ外へ。同11分、野洲高校コーナーキックを得、乾が蹴るもヘディングが届かず。
 後半12分、乾が決定的なスルーパス。村田がゴールキーパーと1対1の状況でシュートを放つもGK山田がかろうじて指先で触りボールはバーを越える。続くコーナーキックを乾が蹴り、草津東DFが跳ね返したこぼれ球を廣瀬がロングシュート。枠内に飛んだが、草津東GK山田がしっかりキャッチ。
 後半15分、ピッチ中央右で草津東がフリーキックを得る。ペナルティーエリア中央手前で岡本がヘッドで落とし、それを中村が左足でシュート。ボールは惜しくもバーを叩き、跳ね返ったボールを再度中村がヘッドで押し込むが、これもバーを直撃。草津東、運にも見放されたか・・・
 後半19分、野洲ディフェンダーのクリアミスを草津東辻がロングシュート。ボールはバーをわずかにオーバー。草津東ここでメンバー交代。14番小林亮太IN、12番西保信吾OUT。このあとも草津東高校の時間帯が続くが、野洲ディフェンダーもがんばりゴールを割れず。
 後半23分、吉川の放り込んだボールを岡本がヘッドで北野につなぎ、北野選手振り向きざまにシュートするもゴール左に外れる。
 後半24分、北野が中央から突破。ペナルティエリア内で倒されるもノーホイッスル。
 後半27分、野洲高校メンバーチェンジ。11番池田卓也IN、14番中武真哉OUT。野洲高校のスローインを乾が受けリフティングした状態で、反転。そのままドリブルで2人を抜き去り、代わった池田にスルーパス。池田はスライディングタックルでつぶされるも、後ろを走り込んだ村田がボールをキープしドリブル。キーパーと1対1の状況になるが、シュートはゴール左に外れる。
 後半34分、草津東高校メンバーチェンジ。7番久保山亮IN、15番吉川智貴OUT。19番辻倫太郎OUT、8番西崎圭祐IN。
 後半35分、野洲高校メンバーチェンジ。15番奥田健斗OUT、24番上田大輔IN。
 後半37分、草津東西崎が野洲高校山田を激しいスライディングで倒しイエロー。草津東は3枚目のイエロー。
 後半38分、乾がセンターサークル付近でインターセプト。そのままドリブルで持ち上がり、11番池田にスルーパス。池田、ゴールキーパーと1対1になるもシュートはキーパーにはじかれボールはゴールラインを割る。コーナーを得た野洲は乾がキッカーだが、時間を考えショートコーナー。相手陣内でボールをキープする作戦。ところがかんたんにボールを失い、怒濤の逆襲を食らう。幸いゴールにはつながらず。
 ロスタイムは4分。
 後半43分、野洲高応援席が「蛍の光」を歌い出す。これが草津東の闘志に火を付けたか、6番岡野が自陣深くから前線へフィード、14番小林がペナルティエリア手前でボールをキープし、中央の北野へ。北野は野洲ディフェンダーと交錯するものの10番中村がフォロー。中村が右前へスルーパスし、7番久保山がセンタリング。ボールは野洲ディフェンダーにあたり、コーナーキック。
岡本亮佑
 草津東はゴールキーパー山田もゴール前に上がり、パワープレイ。キッカー岡野のボールはピンポイントで岡野の頭上へ。岡野ヘッドでボールをたたきつけ、ボールはゴール左隅へ突き刺さる。終了間際の同点劇。思いっきり盛り上がる草津東スタンド。ところが野洲高校側スタンドは意外に冷静な反応。余裕? 直後に後半終了のホイッスル。10分ハーフの延長戦へ。
 
 延長前半、草津東のキックオフで始まる。早々から野洲高校6番芝がしきりに足を気にするそぶり。
 延長前半4分、右から久保山が持ち込み、中央北野へ。北野ドリブル突破と見せかけ後方へパス。西崎シュートを放つもボールは右へそれる。野洲高校6番芝選手、足をつり担架でピッチ外へ。一人少ない状態だが、トップ下乾がゴールラインまでボールを追いかけ、懸命のディフェンス。芝選手はそのまま戻れず、13番志水克行IN。
荒堀謙次
 延長前半9分、野洲高校のコーナーキック。キッカー乾のボールはジャスピンで荒堀の頭上へ。荒堀のヘディングしたボールがゴール右に突き刺さった。延長前半、終始押し気味に試合を進めていたのは草津東だったが、このコーナーでは荒堀選手をフリーにしてしまった。DFが身体を寄せていたら、阻止できたかもしれない1点。直後に延長前半終了。

 延長後半、野洲高校のキックオフで開始。9番山田がガッツポーズで野洲高校イレブンに気合いを入れる。
 延長後半3分、乾がピッチ中央からドリブルでペナルティエリア前まで駆け上がり、左の廣瀬にパス。廣瀬フリーでシュートを放つもゴール右へ外れる。立て続けに4分、乾がセンターサークル付近から11番池田にパスを通すも、これはオフサイド。
 延長後半5分、草津東高校メンバーチェンジ。10番中村龍之介OUT、4番北川陽大IN。その直後、西崎がフリーでボレーシュートを放つも浮かせてしまいゴールならず。
 延長後半6分、野洲高校5番にイエロー。
 延長後半7分、乾が中央をドリブル突破。左の池田にスルーパス。池田シュートを放つもボールは枠に飛ばず。延長ロスタイムは1分。そのロスタイムに草津東高校、またコーナーキックを得る。野洲高校の脳裏には、さっきの悪夢がよぎったことだろう。草津東は当然GK山田もペナルティエリアに入り、パワープレイ。キッカー北川のボールは増田の頭上へ。増田のヘッドはゴールをオーバー。ここで試合終了のホイッスル。歓喜の野洲、崩れ落ちる草津東。フィジカルでは草津東が圧倒していたが、シュート精度を欠き無念の敗退となった。

 一方で勝った野洲高校、乾選手の目にも涙。厳しい滋賀県予選と日本代表との掛け持ち。このホイッスルの瞬間、本当にほっとしたことだろう。ただし、これは単なる予選、通過点に過ぎない。野洲高校には、2連覇めざし、がんばって欲しい。
 
試合の写真は↓にて。
http://homepage.mac.com/duke_togo/PhotoAlbum114.html


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